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最高裁判所第三小法廷 平成4年(行ツ)122号 判決

上告人

株式会社大洋

右代表者代表取締役

尾崎一宇

右訴訟代理人弁護士

有田尚徳

被上告人

揖龍保健衛生施設事務組合管理者

尾西堯

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人有田尚徳の上告理由一について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

同二について

原審が適法に確定したところによれば、上告人は、浄化槽の清掃により生ずる汚泥等の収集、運搬につき、これをするために必要な一般廃棄物処理業の許可を有せず、また、他の一般廃棄物処理業者に業務委託すること等により適切に処理する方法も有していないというのである。右の事実関係の下においては、上告人には、浄化槽の清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があり、浄化槽法(平成三年法律第九五号による改正前のもの)三六条二号ホ所定の事由があるというべきである。したがって、本件不許可処分に違法はなく、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官可部恒雄 裁判官園部逸夫 裁判官佐藤庄市郎 裁判官大野正男)

上告代理人有田尚徳の上告理由

一 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下廃棄物処理法という)第七条許可について

1 原審判決にはその理由に齟齬がある。

(一) 原審判決(一三丁裏)が明示するとおり廃棄物処理法第六条は、市町村は自ら、又は委託によって廃棄物を処理することを明示し、同法第七条で市町村が処理できないときには一般廃棄物処理業の許可を与えることとなっている。

(二)(1) しかるに、原審判決(一四丁裏)は、本件事務組合は龍野衛生公社ら五社の業者に「委託」して龍野市外四町内の住民の一般廃棄物を処理・運搬・処分していたというのである。

(2) 加えて、原審判決(一五丁表)は、本件事務組合は…右生し尿の‥龍野衛生公社、新宮浄化、播州浄化工業の三社に「委託」して処理し、また浄化槽汚泥…龍野衛生公社、新宮浄化、松原清掃、西播環境整備の四社に委託して処理することになっている、というものである。

(3) さらに、原審判決(一七丁裏)は、本件事務組合の「委託」した既存の業者によるその収集・運搬及び処分が困難な状況にはならなかったものというべきであるから…と言うのである。

(三) 右のとおり、原審判決は本件事務組合の管轄区域内の廃棄物処理業者について、許可業者なのか委託を受けた業者なのか、その理由には齟齬をきたしているものである。

(四) 原審判決は破棄をまぬがれないものである。

二 浄化槽法第三五条許可について

1 原審判決はその解釈を誤ったものであり、後記判例に違背するものである。

(一) 原審判決は、廃棄物処理法第七条の許可もしくは既存業者との業務提携がなければ浄化槽法三六条二ホに該当し、その業務に関し不正、又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者といえる、というものである。

(二) しかしながら、浄化槽法三五条許可は覊束裁量行為であることは判例上も講学上も確定したものである。即ち、同法三六条は、「市町村長は前項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ同項の許可をしてはならない」と消極的規定をしているが、同許可は「禁止の解除」と解され、許可にかからしめる営業の制限は必要最小限度にとどめられるべきもので、市町村長は基準に適合していると認定される限り、必ず許可をすべき拘束を受けるものと解するべきである。

(三) しかるに、原審判決のように廃棄物処理法七条の許可等をもって浄化槽法三五条の許可の前提条件とするならば、右法の趣旨は没却されてしまうものである。

(四) なお、原審判決は左記の旧法関係を含む左記判例に違背するものである。

(1) 福岡地裁判決 昭和四八年(行ウ)第二六号

昭和五二年一月二七日判決 行裁集二八巻一・二号二九頁

(2) 宮崎地裁判決 昭和五二年(行ウ)第三号

昭和五四年七月一三日判決 行裁集三〇巻七号一二九六頁

(3) 福岡高裁判決 昭和五七年(行コ)第三八号

昭和五九年五月一六日判決 行裁集三五巻五号六〇〇頁

(4) 高知地裁判決 昭和五七年(行ウ)第七号

昭和六〇年五月九日判決 行裁集三六巻五号六三五頁

(5) 福岡高裁宮崎支部判決 昭和五四年(行コ)第三号

昭和六〇年八月九日判決 行裁集三六巻七・八号一二〇七頁

(6) 山口地裁判決 昭和六二年(行ウ)第一号

平成元年五月二五日判決 行裁集四〇巻五号五四五頁

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